リンパ浮腫
治療・ケアの進め方
実際の診療・ケアの現場の声を交えて
取材協力:
大阪ブレストクリニック リハビリテーション部
木場 依里 先生
リンパ浮腫の治療やケアは、短期間で終了するケースは非常に稀です。ほとんどのケースで長期間の継続した治療・ケアが必要となります。また、それぞれの状態に合わせて医療者や専門的な知識・技術を習得した専門家が治療やケアに当たります。
ケアの中心は患者さん自身ですが、状況に合わせてご家族や友人、医療者や各専門家だけでなく、様々な行政のサポートを上手く取り入れて、無理なく、ケアが継続できることが大事です。まずは、ご自身で自分の身体に何が起こっているのか、どのようなリスクがあり、どのように日常生活を過ごしていけばよいかなど、学ぶ姿勢が大事です。分からないことは一人で抱え込み、悩むのではなく、担当の医療者や専門家に相談しましょう。
リンパ浮腫患者さんの多くは、がんの治療により発症する続発性リンパ浮腫です。
近年のがん治療の進歩により、がんの治療を経て、もしくはがんの治療をしながら日常生活を送られている方が少なくありません。むくみのケアやリンパ浮腫の管理は、快適な日常生活を送っていただくために重要ですが、ケアや治療が日常生活の中心になってしまい、日々の生きがいやご家族・友人との楽しいひと時を妨げてしまうのは、患者さんにとって不本意なことだと思います。相談し、頼れる医療者や専門家との連携をそれぞれ確立するだけでなく、治療・ケアに用いることができる様々な圧迫材料、ケアのツールを上手に生活に取り入れていただき、一日一日を楽しく、日々を快適=“I feel better”と感じながら過ごせると良いですね。
リンパ浮腫の治療は、複合的理学療法(CDT)と呼ばれ、大きく3段階に分かれます。
集中排液期
むくみを短期間で集中して減少させるため、多層弾性包帯やドレナージなど医療者や専門家のサポートがメインになります。
周径が変化しやすい時期ですので、緻密なサイズ設定のある弾性着衣は、時に不向きなこともあります。周径(四肢の太さ)が変化しても対応できる面ファスナー式弾性着衣なども上手に取り入れて、ケアを続けましょう。
移行期
集中排液治療の結果が出始め、むくみが減少してきている時期です。短期目標を立て、ある程度周径が落ち着いた段階で弾性着衣(ストッキングやスリーブなど)を使用することで、日常生活をより快適に、活動的にお過ごしいただけます。個々の状態に合わせて、適切な製品をお使いいただけるよう、医療者や専門家とサイズだけでなく、使用する素材や形状をしっかり話し合って、製品をお選びください。
製品選択に困った場合は、医療者や専門家の方々から各営業担当者へご相談いただくか、弊社カスタマーサービスまでお気軽にご相談ください。
維持期
むくみの状態が落ち着き、周径の変化が少なくなってきた時期です。複合的理学療法を継続するのは大変です。
状態に合わせて必要なケアの要素を上手に組み合わせて状態を維持し、トラブル(蜂窩織炎など)を起こさずに過ごすことが目標になります。
体調の変化などで、悪化することもあるかと思いますが、すぐに連携している医療者や専門家に相談し、悪い状態を放置しないことが重要です。
また、お年を召された場合、関節の動きや手足の力が弱くなってしまい、今までと同じケアができない、以前まで履けていた弾性着衣が使えなくなってしまうといったことがあるかと思います。力が弱くなった方でも継続できる方法や弾性着衣の選択をすることで生活を続けることができます。おひとりで悩まず、まずは相談しましょう。
ひとりの生活者として自立し、自身の健康や生活を管理、マネージメントしていく意識が大事になります。
治療の時期に合わせ、ご自身で目標意識をもって取り組みましょう。
併せて、むくみが出てから治療・ケアをするのではなく、できるだけむくみを起こさない、むくみが出た場合にもできるだけ早くケアを受けられるよう、気をつけながら生活することも大事になります。
ご自身の状態に合わせ、短期・長期の目標を見つけて、生活に取り入れてみてはいかがでしょうか?
オーダーメイドでの弾性着衣作成の流れ
医師の治療方針にもよりますが、リンパ浮腫治療の中で弾性着衣は、四肢の周径(太さ)がある程度落ち着いた頃(移行期から維持期)に用いられることが多いです。
状態が落ち着いた時期とはいえ、部分的なむくみがなかなか解消できず悩んでおられる方や前腕と上腕、下腿と大腿のバランスが悪く既製品ではなかなかサイズが合わない場合にオーダーメイドでの弾性着衣を作成するケースがあります。
既製品の弾性着衣同様に、必ず医療者や専門家の指示で作成します。
オーダーメイドで弾性着衣作成ご希望の場合
オーダーメイドで作成するメリット
オーダーメイドの価格 ご希望の製品生地、圧迫圧、形状や各種オプションにより変わります。
おおよその目安を確認したい場合は、各営業担当者もしくはカスタマーサービスまでお問合せください。
オーダーメイドに対応可能な製品ラインナップ
オーダーメイドで作成できる生地、形状には限りがあります。
詳細は各営業担当者もしくはカスタマーサービスまでお問合せください。
平編み生地の使い分け
弾性着衣は医療機器ですので、必ず医師の指示の下、医療者や専門家とご相談いただきお選びいただくことをお勧めします。
ただし、むくみの管理・マネージメントの主体は患者様ご自身です。
医療者や専門家の提案に加え、お使いになる方、それぞれの状態、治療の目標、生活・経済状況だけでなく、関節の動きや歩行・運動の状態など様々な要素を踏まえた上でお選びください。
medi社の製品のモットーの一つに「医療機器に見えない製品作り」があります。
治療効果はもちろん、毎日の生活へ楽しみや心地よさを加えられる1着を見つけていただけるようお手伝いをさせていただきます。
実際の診療・ケアの現場でどのようにリンパ浮腫治療や圧迫療法、弾性着衣の選定が進められているのか、大阪ブレストクリニック リハビリテーション部 木場 依里 先生にお話をお伺いしました。
同院では、週に5日、リハビリテーション部でリンパ浮腫患者さんの診療を行っています。主治医がリンパ浮腫のケアが必要だと判断した際に、血栓症やがんの再発・転移の有無を確認した上で、リハビリテーション部を紹介します。
リハビリテーション部では、最初の問診として浮腫の出現に関して、以下のような内容を患者さんに伺います。
大阪ブレストクリニック
リハビリテーション部
木場 依里 先生
問診
セルフケア指導
用手的ドレナージや多層包帯法による治療はセラピストが行いますが、基本的に運動療法はご自身で行っていただいています。
※上肢リンパ浮腫患者さんへの運動療法
その後のケアの流れ、患者さんのフォローアップ
必要に応じて週に1~2回から3か月に1回ほど、通院で用手的リンパドレナージや肩関節可動域訓練を行い、ご自身で出来るストレッチや運動を指導します。
むくみが重度な方の場合、患者さんが意欲的であり、かつ時間に都合が合えば、週1~2回程度で通院していただいております。その場合、用手的リンパドレナージに加え多層包帯法を行い、帰宅後入浴時に包帯を外して就寝していただくようにしています。夜間やお家に居る時は、夜間用の弾性着衣の上から包帯を1本軽めに巻いて過ごしていただき、できるだけ状態を維持していただきながら1~2ヶ月過ごした後で、弾性着衣を処方しています。
この方法は頻回に通っていただく必要がありますが、急に腫れてしまったケースでも早い段階からしっかり治療を行うことで早期に改善し、状態が良い方は、2~3か月後には弾性着衣に移行し、その後は自己ケアで状態を保たれている方もいます。
がんの治療内容や経過によって、弾性着衣を処方する時期や使う製品を検討します。
これらの治療により、むくみの変動が大きい場合は、付け外しがしやすく、比較的ソフトな弾性着衣を使って、状態を保ちながら経過を観察していく場合もあります。
院内での平編み弾性着衣に対する感想
*以下は平編み弾性着衣全般に対する感想であり、特定の製品に対する感想あるいは医療者がこれを勧めるものではありません。
患者様からの感想
医療者からの感想